■ 平常点


パッコーンという景気の良い音と、脳天への軽い衝撃で、俺は意識を取り戻した。
薄く開いた目から入るのは友人と若干険しい先生の顔。
「起きろ、野瀬」
欠伸をしながら両手を前に突き出して、体を伸ばす。
「おはようございます。コーセン」
「おう」
先生は男らしい返事とともに、教卓へと帰っていく。どうやらもうHLの時間らしい。
「野瀬も起きた事だし、今日は此処まで」
規律、礼。
一瞬の静寂の後、教室は俄に喧騒し始める。
俺にとっては忙しい、放課後の時間の始まりだ。



特に意味は無くとも、皆、気持ち急ぎ足で廊下を歩いていく。
その波に逆らうように進むと、暫しして、若干俺より背の低いやつが横に並んだ。
「おつかれさま」
「君は、手を抜きすぎだと思うよ」
「成績は完璧であります」
「平常点は?野瀬君」
「ジーザス!」